CMT(シャルコーマリートゥース病) 4歳ごろから症状が出始めたYさん(42歳)

確定診断までの日々と、止まらない症状の進行

4歳頃、何もないところで転ぶようになりました。徐々にふくらはぎが細くなり、足首は大きく内反変形。足首が持ち上がらず、長い距離を歩いたり走ったりすることが難しく、誰にも負けなかったかけっこは一気に最下位となりました。ようやく辿り着いた大学病院の整形外科では「先天性の麻痺」とされ、幼心に「生まれつきなら仕方ない」と自分に言い聞かせました。

成長の過程で、18歳まで4度の大きな手術を受け、補装具を作りリハビリを続けましたが、麻痺や筋力低下は改善どころかむしろ進行するばかり。周囲との違いにモヤモヤしつつも「これが自分だ」と思春期を乗り越えました。

 

「生まれつきでなくCMT病だね」

19歳の時にたまたま出会った神経内科医からの一言。ようやく確定診断が着いた安堵感の一方で「治療法はない、薬もリハビリもエビデンスがない、そして進行する」という現実に人生を否定された感覚に陥りました。

結婚して子どもが生まれた後も、症状はじわじわと進行。30代になると、歩行はかなり難しくなり手指や呼吸筋の麻痺も顕著になっていました。当たり前に出来ていたことがゆっくりと失われていく日々に、やがて気持ちがしぼんでいったのです。

 

HALという希望

CMT病には、効果的な治療薬やリハビリが報告されていませんでした。それでも、担当の作業療法士や理学療法士は、私の仕事や生活をなるべく維持するべく、進行を緩和させる手技や効率よい身体の動かし方を模索してくれました。

 

そんな中で、CMT研究班から「HALが効果ありそう!やってみない?」と提案されたのです。「まさか自分がHALをやるとは!」期待と不安の入院が決まった当時、私は30歳半ばになっていました。

 

下肢運動をアシストしてくれる歩行運動で、おっかなびっくりの初回を終え、HALを外した一歩目・・・衝撃的でした。

「勝手に足が前に出る!」

「姿勢が良くなって視野が広い!」

筋肉の使い方もタイミングも今までとはまったく違う歩行体験は、「体が歩き方を思い出した」という印象で、結果として歩行距離も伸び活動量も増加していきました。

 

〜歩きやすさを”リハビリ”するロボット〜

私にとってHALは、”歩行の量(筋トレ)”ではなく”歩行の質(歩きやすさ)”を向上してくれるロボット。私の”歩きたい意思”を察して歩行動作を補い、さらには「うまく歩けたね!それでいいよ!」とフィードバックしてくれる…まるで”2人2脚(スタッフを入れると4人6脚)”のイメージです。そのためか、筋肉の疲れよりも”脳が疲れる”感覚があります。

 

HALを使う際は、担当セラピストに些細な感覚や印象をすぐに伝えるよう努め、主体的にアイデアや疑問をぶつけました。”無理なく楽に歩く”を意識してHALを微調整してもらい9回(1クール)を終了。

 

退院して家族の元へ戻り、仕事にも復帰できました。歩行機能の改善が促進されているためか、以前のように歩くことが嫌ではなくなっていきました。

 

HALがもたらすもの

私はHALによって、”歩くこと”に大きな変化がありました。そして、仕事や生活に安心感と、新たな挑戦をする心のゆとりを得ることができました。体だけでなく、気持ちの変化も実感しています。

HALを始めて4年。

CMT病の私は、1年に1回のHAL治療の入院(初年度のみ年に3回)と1ヶ月に1回の外来リハビリで、身体機能の維持が図れていると感じています。

 

メッセージ

HALをやっておしまいではなく、動きやすくなった体でどんな暮らしを望み、何を叶えたいのか…そんなことを想像しながら、皆さんもHALにトライしてみてはいかがでしょうか?

 

私は、CMT病への革新的な治療法が見つかるまで、また自己実現のためにもこの体を長持ちさせていきたい、と気持ちは前向きになれています。もしも、幼少期にHALが開発されていて体験するチャンスがあったなら、また違う自分がいたかもしれないと想像することがありますが、それでも今は、少しずつ変化する体や症状に合わせて、楽しく工夫しながら毎日を過ごせています。

 

病気と上手に付き合う

CMT病は、末梢神経疾患であり、主に身体の遠いところから麻痺がおきてきます。そのため、下肢だけでなく上肢(手指)にも動かしにくさを感じたり、感覚の異常を覚えることがあります。

 

職場や学校では、エネルギー消費を抑え手足に負荷がかかりすぎない工夫をしながら生活することが望ましいです。

壁にもたれたり、座って作業するなど下肢への負担を減らし、初期には、ブーツやハイカットの靴を選んで歩行の安定を増加させたりします。また、ボール式マウスや柄の太い筆記具、電子マネーを活用したりして手指の負荷を軽減します。

注意事項

当サイトは、装着型サイボーグHALによる治療を受けられる方、およびご家族の方向けに情報を掲載しています。
医学的な判断、アドバイスを提供するものではないことをご了承ください。
HALの治療を受けるに当たっては、医師の指示に従ってください。

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